本の詳細

本書は、大学学部において経営学を学ぶ学生向けに執筆した教科書です。その特徴は、各分野の専門家が共著で執筆することで、入門書として抑えるべき内容を体系的に踏まえつつ、やや専門的な内容まで踏み込んで書かれているという点です。経営とは、「経営資源の4要素（ヒト、モノ、カネ、情報）をいかに効果的に活用して組織の目的を達成するのか」が重要な課題です。本書ではその課題を実現するための基礎的な知識習得と活用がイメージできるように執筆いたしました。おそらく本書の内容を十分に理解していただければ、その先の各分野の専門書にも抵抗なく入っていけることでしょう。

それゆえ、社会人になっての学び直しにも使える書籍になったと思います。社会学、経済学、経営学などの社会科学系の分野に進む学生は全体の3割程度なので、社会人の方の多くは学生時代に経営学に触れずに、実務や組織のマネジメントを行うことが多いようです。社会人になってから経験的に理解していることを体系的に整理するうえでも本書は役に立つことでしょう。

複数の著者が執筆したという点では、やや統一感に欠ける面があるかもしれませんが、それ以上に「分かりやすさと専門性のバランス」の取れたテキストに仕上がったと考えております。経営学を学ぶ学生と社会人の学び直しに本書が貢献できることを期待しております。

本書の使い方

本書では、各章の冒頭に「学びのポイント」と「キーワード」が書かれています。学びのポイントは各章の学習に入る前はもちろんのこと、学習後にもう一度振り返り理解度を把握するための確認に活用して欲しいと思います。また、キーワードは自分の言葉で解説できるようになっていることが大切です。

さらに、章末には「考えてみよう」として、グループでディスカッションをしたり、個人でレポート作成する際の視点を提示いたしました。何か明確な答えがある訳ではなく、これらの点について調べ、深く考え、言葉や文章でアウトプットすることで、学習内容が身に着くことと思います。また、とても大切なことですが、こういった学習を通じて経営学への興味がわくことに繋がることでしょう。

それでは、我々執筆者との本書を通じての対話を楽しみながら学習を進めてください。

はしがきより

発売日：2025年３月25日

著者：塗茂克也（編・著）仁平晶文・藤波美帆・松本竜一・藤原達也・元吉悠太（著）

サイズ：B5

ページ：176ページ

ISBN：978‐4‐910911‐31-1

著者略歴:　

仁平 晶文（にひら あきふみ）

千葉経済大学経済学部教授。

横浜国立大学院国際社会科学研究科企業システム専攻博士後期課程修了　博士（経営学）。

東京経営短期大学専任講師等を経て、2015年千葉経済大学経済学部准教授、2022年から現職。専門は組織間関係論、経営戦略論。

塗茂 克也（ぬしも かつや）

千葉経済大学経済学部教授。

専修大学経営学研究科博士後期課程修了　博士（経営学）、中小企業診断士。

企業の経営企画部門にて経営計画の策定から現場改革までさまざまな業務を経験したのち、人事・組織戦略系コンサルタント会社取締役を経て、コンサルティング会社を起業。新潟経営大学経営情報学部准教授を経て、2021年千葉経済大学経済学部准教授、2023年から現職。研究対象は、日系中堅・中小企業による海外現地法人のマネジメント。

藤波 美帆(ふじなみ みほ)

千葉経済大学経済学部准教授。

学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学。

（独）労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、（独）高齢・障害・求職者雇用支援機構調査研究員を経て、2014年より千葉経済大学、17年より現職。専門は人的資源管理、人材育成。

松本 竜一（まつもと りゅういち）

千葉経済大学経済学部准教授。

日本大学商学研究科博士後期課程満期退学　修士（商学）。

湘北短期大学専任講師を経て、2021年から千葉経済大学経済学部専任講師、2022年から現職。専門はマーケティング、流通論。

藤原 達也（ふじわら たつや）

千葉経済大学経済学部専任講師。

麗澤大学大学院経済研究科経済学・経営学専攻博士課程修了　博士（経営学）。

麗澤大学経済学部非常勤講師、嘉悦大学経営経済学部非常勤講師、文教大学経営学部非常勤講師を経て、2022年から現職。専門は企業倫理。

元吉 悠太(もとよし ゆうた)

千葉経済大学経済学部専任講師。

神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了　博士（経営学）。

独立行政法人や地方公共団体等の公的機関、城西大学経営学部非常勤講師などを経て、2024年から現職。専門は経営管理論、経営組織論、公共経営論。

目次

目次
はしがき

第1章　経営学の世界へようこそ
1. 経営学の素朴なイメージ
2. 大学生Aさんのとある一日のはじまり
3. 経営学とは
3-1. 「組織」に注目する経営学
3-2. 「企業」に注目する経営学
3-3. 本書の経営学の定義
4. 経営学を自分のものにする

第2章　経営者の仕事を知る
1. 「経営のジレンマ」を乗り越える
2. 経営者に必要とされる能力
3. 経営者の仕事
3-1. 組織の未来を構想する―経営戦略の策定
3-2. 物語としての戦略を作る―事業の定義
3-3. 組織の方向性を見直す―戦略の変革
4. 戦略と組織を支える経営理念

第3章　競争に勝つための戦略
1. 製品・サービス市場での競争
2. 競争に勝つための戦略
2-1. 3つの基本戦略
2-2. ターゲット顧客の選択
2-3. 差別化のポイントと差別化のジレンマ
3. 競争戦略を構想する
3-1. 持続的な競争優位性の源を見いだす2つの視点
4. 競争戦略の本質

第4章　経営資源の4要素
1. 経営資源とは―ビジネス活動と経営資源
2. ヒトにかかわる資源－人的資源
3. モノにかかわる資源－物的資源
4. カネにかかわる資源－財務資源
5. 知識・情報に関わる資源－情報的資源

第5章　組織マネジメント
1. なぜ組織は必要か
2. 組織とは何か
2-1.組織の定義
2-2.組織成立の3要素
3. 組織における内部構造
3-1. 組織設計の基礎
3-2. 組織の基本的な形態
4. 組織のなかの人間行動
4-1. 組織メンバーのモチベーション
4-2. 組織におけるリーダーシップ

第6章　人材マネジメント
1. 人材マネジメントとは―基本概念とプロセス
2. 等級制度、評価と報酬
3. キャリアと育成
4. これからの人材マネジメント

第7章　マーケティング
1. マーケティングとは
1-1. マーケティングの定義
1-2. ニーズとウォンツ
2. マーケティング・コンセプト
2-1. マーケティングの役割
2-2. プロダクトアウトとマーケットイン
3. マーケティング戦略の設計
3-1. 市場細分化（セグメンテーション）
3-2. ターゲティング
3-3. ポジショニング
4. マーケティング・ミックス
4-1. 製品
4-2. 価格
4-3. 流通経路
4-4. プロモーション

第8章　生産マネジメント
1. 生産マネジメントの始まり
1-1. 科学的管理法
1-2. フォード・システム
1-3. 科学的管理法とフォード・システムの問題点
2. 品質
2-1. 品質管理
2-2. QCサークルとTQC
3. コスト
3-1. 原価管理
3-2. ムダの削減
4. 納期
4-1. 生産方式の種類
4-2. 工程管理
4-3. かんばんシステム
5. サプライチェーンマネジメント

第9章　バリューチェーンと流通戦略
1. 日常の中にある流通
2. バリューチェーン（価値連鎖）
2-1. バリューチェーンとは
2-2. バリューチェーンの構成
2-3. バリューチェーンと競争優位
3.経営学における流通の役割
3-1. 流通とは
3-2. 流通フロー
3-3. 流通の社会的役割
3-4. 流通チャネルの選択
4. 物流とは
4-1. 物流の定義
4-2. 物流の領域
4-3. 物流の諸機能
4-4. ロジスティクス

第10章　情報マネジメント
1.情報化社会の進展
2.企業経営と情報システム
2-1.企業における情報技術の活用
2-2.情報システムの諸展開
3.情報システムの現代的重要性
3-1.人手不足の解消
3-2.多様な働き方の実現
4.ナレッジ・マネジメントと知識創造
4-1.ナレッジ・マネジメントとは
4-2.知識創造プロセスとしてのSECIモデル
4-3.知識労働者とそのマネジメント

第11章　株式会社の仕組み
1. 企業の種類
1-1. 目的による分類
1-2. 法律による分類
2. 株式会社の資金調達
2-1. 株式発行
2-2. 借入と社債発行
3. 株主の権利
3-1. 株主総会での議決権
3-2. 配当金を得る権利
3-3. 残った財産を得る権利
4. 所有と経営の分離
4-1. 専門経営者の登場
4-2. 経営者支配の拡大
5. 株式会社の目的再考
5-1. 株式会社の起源
5-2. 渋沢栄一の『論語と算盤』

第12章　企業の社会的責任
1. 企業の社会的責任とは
2. コーポレートガバナンス
2-1. 経営者の義務
2-2. コーポレートガバナンス体制の構築
3. 環境問題への対応
3-1. 環境経営の必要性
3-2. 気候変動問題への取り組み
4. 人権問題への対応
4-1. ビジネスと人権
4-2. 人権を尊重する企業の責任
5. 多様なステークホルダーからの期待
5-1. ESG投資とエシカル消費
5-2. 三方よしとCSV
6. CSRの位置づけ

第13章　中小企業のマネジメント
1. 中小企業の定義と役割
1-1. 中小企業基本法による定義
1-2. 中小企業支援の必要性
2. 中小企業問題と中小企業政策
2-1. 経営資源の問題
2-2. 取引関係の問題
2-3. 中小企業政策の必要性と中小企業基本法
3. 分業・下請けの構造転換
3-1. 日本の生産分業・下請システムとは
3-2. 下請のメリット・デメリット
3-3. 分業・下請構造を取り巻く環境変化
4. 産業集積と地域産業
4-1. 産業集積の定義と役割
4-2. 産業集積の分類
4-3. 地域産業の課題
5. 後継者難と事業承継
5-1. 休廃業の増加傾向と後継者不足
5-2. 後継者候補と事業承継課題

第14章　多様な組織
1. スタートアップとベンチャー
1-1. スタートアップとその意義
1-2. ベンチャーとの違い
1-3. スタートアップ支援策
2. 非営利組織
2-1. 非営利組織とは
2-2. 非営利組織のマネジメント
3. 国際経営の基礎と歴史
3-1. 国際経営とは
3-2. 国際経営の基本的な理論
3-3. 国際経営に影響を与える環境
4. 国際経営の戦略とマネジメント
4-1. 国際経営戦略の歴史
4-2. 日本企業の展開
4-3. 国際経営におけるマネジメント

おわりに
著者略歴