これでよいのか観光政策ー22世紀に生きる子どもたちのために 井口 貢監修・郭育仁編

これでよいのか観光政策ー22世紀に生きる子どもたちのために 井口 貢監修・郭育仁編

(039)

 

本の詳細

著者メッセージ

観光は経済政策だと断言してはばからない人たちがいる。

住んでよし、訪れてよしの国・地域づくりを目指すという言葉も、かつて定番のようにして語られてきた。

しかし、本書からの提案は22世紀に生きる子どもたちに地域協育の一環として観光をいかに伝えるかにある。
そしてリベラルアーツと人文知の大切さを基調とした教養編では、子どもたちの遊びを切口とした生活文化への眼差し、文化と経済がともにもつ両義性を視野に入れた、観光が有する真の価値の創造、数字の海に溺れることなく観光統計リテラシーをどうとらえるのか。観光産業がもつべき本質的な意義、地域観光の片務的正義から脱した自治を手掛かりに、観光の学際性とその融合を試み、観光政策の要諦としてこうした諸点をさし示したつもりである。そのために個々の具体的な事例も、多く記してある。

それらを手掛かりに、今一度早急な観光政策から、一歩立ち止まることの意義も併せ考えてもらえればと祈念している。

 

発売日:2024年4月1日

 

著者:井口 貢監修・郭育仁編

サイズ:A4

ページ:106ページ

ISBN:978‐4‐910911-12-0

 

著者略歴: 

井口 貢(いぐち みつぐ)序章〈共著〉、第1章、終章〈共著〉
同志社大学政策学部・総合政策科学研究科教授。
1956年滋賀県生まれ。滋賀大学経済学部、大学院経済学研究科修了。
岡崎女子短期大学助教授、岐阜女子大学文学部助教授、
京都橘女子大学文化政策学部助教授、教授を経て2007年より現職。
専攻:文化政策、観光文化論
主著(直近5年の単著のみ記載)
『反・観光学—柳田國男から、「しごころ」を養う文化観光政策へ』(ナカニシヤ出版、2018年)
『深掘り観光のススメー読書と旅のはざまで』(ナカニシヤ出版、2021年)
『昭和歌謡と人文学の季節』(ナカニシヤ出版、2023年)

郭 育仁(かく いくじん)序章〈共著〉、第6章、終章〈共著〉                    静岡英和学院大学人間社会学部教授。                                    同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程(後期課程)修了。博士(政策科学)。
文化政策学・観光学専攻。                                          『次世代創造に挑む宗教青年―地域振興と信仰継承をめぐって』〈共編〉(ナカニシヤ出版、2023年)、「観光振興における文化政策の主体性についての史的考察―豊かな日常性の構築から紡ぎだす観光と文化」(博士学位論文、同志社大学総合政策科学研究科、2015年)、「民際的紐帯の形成とその訪日観光振興」(『鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要』⑹、2023年)など。

岩﨑早穂(いわさき さほ) 第2章、第10章、第11章
同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程(後期課程)在籍、姫路獨協大学非常勤講師。
文化政策学・観光学専攻。
「柳田國男と宮本常一の旅概念を導きの糸とした観光政策の所在」(『同志社政策科学院生論集』⑼、2020年)

古池嘉和(こいけ よしかず) 第3章
名古屋学院大学現代社会学部 学部長/教授
福井県立大学経済・経営学研究科博士後期課程満了、博士(経済学)、富山大学芸術文化学研究科教授を歴任後、2015年4月より現職。専門は、文化・観光政策。
主著:『観光地の賞味期限「暮らしと観光の文化論」』(春風社、2007年)、『地域の産業・文化と観光まちづくり』(学芸出版社、2011年)、「生きた産業観光の、その先に-愛知の産業、文化と観光を考える」『芸術批評誌REAR』(2022年)など。名古屋市・豊田市・西尾市・刈谷市・小牧市(以上愛知県)、高岡市・南砺市(以上、富山県)など自治体の観光/文化、まちづくり関連の委員会を歴任。

用田政晴(ようだ まさはる) コラム
神戸学院大学人文学部教授・神戸学院大学博物館学芸員課程主任
岡山大学法文学専攻科史学専攻考古学コース修了。博士(人間文化学)。考古学・博物館学専攻。
『博物館を楽しむ-琵琶湖博物館ものがたり-』〈共著〉(岩波書店、2000年)、「環境こだわり県の博物館が地域観光の拠点に」『観光振興と地域社会』〈共著〉(ミネルヴァ書房、2002年)、『湖と山をめぐる考古学』(単著)(サンライズ出版、2009年)、『琵琶湖と古墳-東アジアと日本列島からみる-』(単著)(サンライズ出版、2021年)「旧明石郡の前期前方後円墳の史的位置」(『神戸学院大学地域研究センター活動・研究報告書』、2024年)など。

川又俊則(かわまた としのり) 第4章
鈴鹿大学こども教育学部教授。
成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士後期課程単位取得退学。社会学(宗教・地域・教育)専攻。
『次世代創造に挑む宗教青年-地域振興と信仰継承をめぐって』〈共編〉(ナカニシヤ出版、2023年)、『近現代日本の宗教運動-実証的宗教社会学の視座から』〈共編〉(ハーベスト社、2016年)『世の中が見えてくる統計学』(単著)(幻冬舎エデュケーション新書、2015年)など。

川﨑友加(かわさき ゆか) 第5章、第7章
桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授。
同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程(後期課程)修了。博士(政策科学)。
文化政策学・観光学専攻。
『地域産業の経営革新と流通・マーケティング戦略』〈共著〉(千倉書房、2024年)、『現代のマーケティング戦略』〈共著〉(三学出版、2022年)、『現代の観光を学ぶ』〈共著〉(八千代出版、2022年)、「清水港周辺における港湾の観光政策に関する一考察」(『静岡英和学院大学 紀要』(20)、2022年)、「茶産地におけるツーリズムの役割-静岡県を事例として―」(『企業経営研究』(24)、2021年)など。

山本 耕(やまもと こう) コラム
岐阜放送代表取締役社長
早稲田大学教育学部卒業。岐阜新聞編集局長、論説委員長などを経て現職。
専攻・関心分野:新聞、雑誌などメディア史や、カストリ雑誌、遊郭、花柳界、盛り場などの歴史探求
著書:「岐阜新聞連載コラム 口笛と分水嶺」(岐阜新聞社、2015年)、「光秀の歩き方」(同、2019年)、「復興期の新聞群像 メディアでたどる戦後岐阜」(同、2024年5月刊行予定)

冨本真理子(とみもと まりこ)第8章
鈴鹿大学国際地域学部教授。鈴鹿大学大学院国際学研究科科長。
京都橘大学大学院 文化政策学研究科博士後期課程修了。博士(文化政策学)。
「鈴鹿大学における『モータースポーツ論』『モータースポーツマネジメント』の歩みと展望~6年間を振り返って~」(『鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要』⑸、2022年 )(単著)、
『固有価値の地域観光論―京都の文化政策と市民による観光創造』(単著)(水曜社 2011年)など

吉成信夫(よしなり のぶお) コラム
ぎふメディアコスモス 総合プロデューサー。
成蹊大学法学部卒業。CIコンサルティング会社(東京)などに勤務。その後、森と風のがっこう代表理事、県立児童館いわて子どもの森初代館長、岐阜市立図書館長を経て、現職。東海国立大学機構参与を兼務。毎日新聞地球未来賞クボタ賞を受賞。
専門・関心領域:図書館を核としたまちづくり、市民協働の調査研究
『ハコモノは変えられる! 子どものための公共施設改革』(単著)(学文社、2011年)、『市民が育む持続可能な地域づくり−地域メディアの役割と文化拠点としてのミュージアム』〈共著〉(同時代社、2023年)など。

平野知見(ひらの ともみ) 第9章
京都文教大学こども教育学部准教授。
滋賀大学大学院教育学研究科修了(教育学)。専門分野:多文化教育・保育。
「子どもと大人のサードプレイスの役割と人材に関する研究」(『京都文教大学こども教育学部研究紀要』⑶、2023年)(単著)。 現在、子どもと大人のサードプレイス「ちゃいるどビレッジ」を企画・運営しながら、地域でサードプレイスを創ってみたい、携わってみたいという人たちのための「サードプレイスコーディネーター養成講座」(入門編・実践編・応用編)を2023年度より実施。

今井真貴子(いまい まきこ) コラム
京都文教大学総合社会学部非常勤講師
同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程(後期課程)修了。博士(政策科学)。
旅館経営、岐阜女子大学准教授(観光、文化)、社会福祉法人児童施設施設長を経て現職。京都市社会福祉協議会生活支援相談員を兼務。
『観光文化と地元学』〈共著〉(古今書院、2011年)、『宿泊業マネジメント研修テキスト 旅館業編』〈共著〉(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会、2020年)など。

井口皓太(いぐち こうた) コラム
同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程(前期課程)在籍。
同志社大学政策学部卒業。

 

目次

目次

序章 観光学をひらく〜子どもたちの観光教育を視野に

第1部  教養編 〜観光について学び直し

第1章 観光とリベラルアーツ
1-1 観光とは経済政策なのか?
1-2 観光とは、人として生きる道標
1-3 史心の大切さと社会科学的暴力の相対化、あるいは「はいからはくち」とは?
1-4 文学・文芸と観光文化
1-5 そして観光の要諦について考えてみよう―行為としての観光と学としての観光

第2章 柳田國男の『こども風土記』
2-1 柳田國男『こども風土記』を読む
2-2  地域文化の語り手としての観光
2-3 くらしの歴史と地域へのまなざし
2-4 現在と過去との邂逅

第3章 これからのわが国の観光の危うさを
3-1 観光立国という欺瞞
3−2 萎縮する生活世界―創造的基盤の解体
3-3 ゲストがみている幻想
3-4 観光政策の両義性
3-5 「愛おしさ」を交換する観光
3-6 生活世界を深化させるアート
3-7 永遠に危うい観光
コラム  子供たちのための博物館教育

第4章 だまされず、だまさないための観光統計リテラシー
4-1 数字を読み取る基礎
4-2 社会学者が見る観光統計
4-3 観光統計を発信しよう/読み解こう

第5章 旅行業務学習の意義
5-1 旅行業務学習とは
5-2 資格学習と旅行業務学習の範囲
5-3 観光学としての旅行業務学習
5-4 持続可能な観光実践へ向けての旅行業務学習

第6章 嵯峨嵐山を活かした「嵯峨の心」の創造と継承
6-1 観光と嵯峨嵐山〜テキストから地域社会へのいざない
6-2 嵯峨嵐山における観光自治の模索
6-3 子どもたちとともに創る「嵯峨の心」
6-4 嵯峨嵐山の暮らしの流儀―大人と子どもの共通感情から
コラム  観光都市だった岐阜の未来

第2部  実践編 〜地域のなかの次世代観光
第7章 地域連携を取り入れた修学旅行の新たな展開
7-1 修学旅行の変遷と現状
7-2 暮らしに根づく体験型修学旅行の事例
7-3 暮らしに根づく体験型修学旅行の効果
7-4 地域の文化継承と修学旅行の方向性

第8章 企業・ホンダのモータースポーツにみる子どもの観光教育
8-1 モータースポーツのまち鈴鹿市
8-2 鈴鹿サーキット/モートピアについて
8-3 社会的意義を見据えた修学旅行誘致
8-4 鈴鹿サーキットの教育プログラムの展開
8-5 終わりに
コラム  子どもが企画し発信するラジオ

第9章 滋賀県大津市における「ちゃいるどビレッジ」の活動 -多世代間のサードプレイスを目指して-
9-1 こどもを取り巻く社会に関わる新たな動向
9-2 新型コロナウィルス感染症がもたらした様々な制限
9-3 サードプレイスとは
9-4 日本におけるサードプレイスとは
9-5 滋賀県大津市での活動「ちゃいるどビレッジ」の実際と人材
9-6 これからの地域におけるサードプレイスとは
コラム  ここにはいつも旅人がいる

第10章 小学校における観光教育
10-1 観光教育とは
10-2 小学校における「観光教育」
10-3 「生きる力」を養うための観光教育
10-4 教養としての観光教育

第11章 地域におけるこどもの観光教育
11-1 日常の中の観光
11-2 地域の中の「良さ」探しと「22世紀に伝えたい近江八幡プロジェクト」
11-3 死に甲斐のあるまちづくりを21世紀のこどもたちへ
11-4 こどもの視点と地域観光
コラム  ガイド現場での観光教育 ―京都と子どもたちの狭間で―
終章 22世紀に生きる子どもたちのために……観光政策の要諦

参考文献
著者紹介

 

在庫状態 : 在庫有り
¥2,980(税別)

( 税込¥3,278 )

数量